楽山舎通信

わたじん8の日記です

2022年6月3日(金)第30回インターナショナルオルガンフェスティバルインジャパン@福島市音楽堂

福島市音楽堂で、パイプオルガンの響きを聞いてきた。

パイプオルガンの響きを、ホールで生音で聞くのは、初めてかもしれない。かもしれない、というのは、学生時代に、東京カテドラルの教会のパイプオルガンの演奏を、本意ではなく耳にしていたかもしれないという、薄い記憶がある。強烈なインパクトを伴わないのは、「教会に行く」という行為が、私にとっては少し不本意な記憶であるためか、実際、場違い感が半端なく、東京カテドラルのあの建物の荘厳さと、そこに集っている人たちと自分との格差が、単なる田舎者としての甲乙以上に、「別の人種」的な違和感もあって、東京カテドラルに顔を出したのは、ただの1回切りだった。私は、学生時代を文京区で過ごしていたので、そこは散歩の範囲内でもあったが、なぜか近寄りがたい場所であった。坂の上の文京区よりも、坂の下、神田川沿いの豊島区のほうが、学生時代の私には合っていたのかもしれない。髭ぼうぼう学生の私にとって、身なりのきちんとした上流階級の人たちのニオイのする場所は、居心地が悪かった。

前置きが長くなった。

パンデミックの影響により、2020年に開催予定だったコンサートが、2度の延期の末に開催となったのが、今回のフェスティバルである。

このコンサートは、指定席なしだったので、開演間近に会場に到着すると、後ろの方しか空いてないかと思っていたが、開演10分前に到着してホールに入ると、「ガラガラ」だった。パイプオルガンは、「3階席」ぐらいの高さにあることもあり、座席は中心部から客席から見て左側後方を中心に埋まっていた。前部と右側は、ほとんど座っていない。ということから判断して、半分から多く見ても6割ぐらいの入りだったろうか。

ちなみに、音楽堂の入り口に「反田恭平 完売」の張り紙がしてあり、世界的な演奏家の演奏にも関わらず、パイプオルガンは人気がないんだな、というのをまず感じた。

このコンサートは、国内4公演が開催されるが、首都圏以外での開催は、福島だけである。後援にもずらっと名前が並び、もっと集客力があるかと思いきや、客の一人として、「もったいないな」と思うとともに、福島市民の音楽文化への関心は、高くはないんだな、とも思ってしまった。

開演とともに、司会として登場してきた女性にスポットライトがあたり、声を聞くなり、NHKのニュースで良く聞く声だ、と思ったら、「高石桃子」と自己紹介があった。NHKのニュースで見ている印象とはずいぶん違い、リカちゃん人形みたいに可愛らしくきれいなドレスを品良く着こなしていた。プロのアナウンサーの声で案内があるだけで、コンサートのグレードがぐっと上がる。

演奏者は、エルンスト・エーリッヒ・シュテンダー。ドイツ最高のオルガン奏者とある。78歳。

まずは、バッハのトッカータとフーガ。

いきなり音圧がものすごく、「キター」と思う。やはりパイプオルガンと言えば、バッハである。と、個人的には思う。バッハのオルガン曲は、なぜか壮大な宇宙をイメージさせる。ところが、バッハは最初の一曲だけで、次のベートーベンの運命のオルガンバージョン、エルガー威風堂々のオルガンバージョンの次から日本の音楽のオルガンアレンジになり、悪くはないのだけど、パイプオルガンの荘厳な感じからすると、私としては「ちょっと違うな」的な感想になっていく。もちろん、演奏は素晴らしいのだけれども、やっぱりなんかイメージと違っていた。

このフェスティバルの主催者である、児玉麻里さんが最初と最後に登場されたが、左腕から肩が包帯でぐるぐる巻にされていて、足にも包帯が巻かれている感じで、「医者に止められたが病院を抜け出してきた」という満身創痍の状態で、このコンサートの意義を熱弁された。

中で、バッハは4000曲、古関裕而は5000曲という紹介があり、これが強調されていて、バッハと日本の音楽を同列に置くことの大切さをお話されていたのだけど、音楽に素人のワタシの感想としては、「音楽の父」として、普通の学校教育の中でも突出した音楽家として教育を受けるバッハと、古関裕而を同列に語るのは、個人的な主張だとしても、なんか違うかなと思ってしまった。

演奏が終わってみると、やはり最初に聞いたバッハのオルガン曲の凄さが際立ち、できればアンコールでバッハの有名なコラールなんかを聞いてみたかった気がするが、それは、パイプオルガンによるオールバッハプログラムのコンサートが開催される日を待つしかないようである。

以下は演奏予定曲のコピペ。

 

☆オルガンソロ演奏曲目 (演奏曲目は変更されることがあります)
J.Sバッハ トッカータとフーガ 二短調 BWV565
L.V.ベートーヴェン 運命 交響曲 第5番 ハ短調op67
E.エルガー 威風堂々 作品39-1
滝廉太郎 作曲/児玉麻里 編曲 荒城の月
山田耕作 作曲/三枝成彰 編曲 この道
南能衛 作曲/三枝成彰 編曲 村祭
ジョージ・ガーシュウイン作曲 ス・ワンダフル
伊福部昭 作曲 ゴジラのメインテーマ
村井邦彦 作曲 翼をください
古関裕而 作曲 とんがり帽子
モンス.レイトヴィン.タクレ 命の力