楽山舎通信

わたじん8の日記です

2022年8月18日 吉田篤貴EMO strings meets 林正樹

吉田篤貴EMO strings meets 林正樹

分類はジャズ。

818日は、那須にある「弦楽亭」というちいさなコンサートホールで、音楽に酔い尽くす至福の一時であった。最後の曲は撮影OKSNSで流すのもOK

前日に、「集客に苦労しています」という林さんのツイートが流れてきて、その日は仙台だったが、仙台ではなくて「苦戦している」那須のほうのチケットを予約。

ちなみに、仙台のほうが近い感覚でいたが、「那須町」のほうが圧倒的に近かった。高速使うと、どちらも同じくらいの所要時間だが、距離でいえば那須は近い。

しかし、場所的に「那須町」というのは、中途半端なのだろうか。週末はリゾート地として賑わうが、平日の夜に、那須の別荘地帯だと、なかなか行ける人は少ないのか。仕事終わりにちょっと立ち寄る、という感じの場所ではない。福島栃木あたりのファンにすれば、いい感じの立地なのだが、そもそも、このユニットの認知度が高くないのかもしれない。

ピアノと弦楽5重奏という編成は、ジャズというよりはクラシック寄りで、ジャンルでいえば「インストルメンタル」と表現するのが正しいかもしれない。このクロスオーバーな感じも、固定の客層がなかなかつかめないジャンルなのかもしれない。カテゴリーはジャズだけど、弦楽中心なので、かなりクラシック寄り。

個人的には、ボサノバギタリスト伊藤ゴローさんのプロジェクトで弦楽器をフィーチャーしているのを聞いたあたり(land&quiet2019)から、弦楽のジャズ的な展開に興味を惹かれ、昨年は、上原ひろみと弦楽4重奏のクインテット(シルバー・ライニング・スイート)の演奏で、クラシックとジャズのクロスオーバーとも言える、弦楽器の新たな展開に興奮したのだった。弦楽器の入るジャズは、ここ数年のトレンドにもなっている。と個人的に思う。このことは、NHKFMのジャズトゥナイトで大友さんが弦楽入るユニットの多さを話していたので、間違いない。弦楽が入ると、音楽が優しい耳あたりになるのである。真逆は、自分の中ではサクソフォン。音の持つパワーが全然違う。

で、弦楽よりの耳になっている私、「吉田篤貴EMO strings」のアルバム「Echo」は、即買い。

基本的には、ピアノが好きなので、林正樹さんからの流れで、いろいろと聞いてきた。

林正樹さんの演奏を最初に見たのは、渡辺貞夫さんの郡山「富や蔵」でのライブだから、何年前になるだろう。なぜか印象的に覚えている。ピアノのレギュラーは小野塚晃さんだったけど、その時だけ林さんだったのか。

今回のコンサートの会場である「弦楽亭」は、私の感覚で言えば「教会建築」風のホールで、ロケーションも素晴らしく、街なかのコンクリートのビルのフロアで演奏されるのを聞くのとは、心の置き場所が全く違う祝祭空間だった。もちろん、弦楽器の響きも違う。というか、コンクリートで残響に配慮した専用ホールのほうが、残響音などの音響は良いのだろうが、木で囲まれた空間は、残響音の長さとは別の、柔らかみのある響きがある。木が音の振動をある程度吸収しつつ、音をよりまろやかにして跳ね返す。そんな感じだ。

開演10分前ぐらいに到着したが、ほんとうにガラガラな感じで残念でもったいなかったが、非常にゆったりと音楽を楽しむことができて、3000円では申し訳ないぐらいだった。興行的には、大赤字だったに違いないが。100席近く設定していて20人ぐらいだっただろうか。

弦楽器の音は、CDで聞いているのと、生演奏では、耳に入ってくる音が明らかに違う。とりわけ、高齢化によって若干難聴気味になる私の聴覚では、CDでは拾えていなかった音が、やはり生演奏だとはっきりとわかることになる。弦楽器のピチカートの小さな音や、かすかなざわめきにも似た弦の音は、目の前で見ている楽器から出ていると認識することでしかわかり得ない音であると思った。やはり、どんなに録音の技術が高くなっても、生演奏のマイク通さない生音は、別物、生き物だ。

私がここ最近、ジャズ・フュージョンよりもクラシック系の音楽鑑賞に傾いているのは、「生音」へのこだわりからである。

マイクで拾ってスピーカーから聞こえるのと、生音の差というのは、やはり大きな違いだな。それぞれに配置された楽器から、それぞれの音が別々に発して、それが自分の耳の位置でブレンドされて聴覚と脳が認識するというのは、やはり感覚として別物である。

2022年という、国際的に荒れた時代の中で、パンデミックでの自粛期間を抜け出たアーティストたちの喜びの音が、身体に心地よいひとときであった。