楽山舎通信

わたじん8の日記です

2023年3月12日(日) 原発事故から12年

12年前、2011年の3月12日。東日本大震災の翌日の夜、私の住む二本松市の上空では、たくさんのヘリコプターが着陸待機のための旋回を繰り返していた。救急車のサイレンがなり続け、何が始まったのかと、ただただ、夜空に舞うたくさんのヘリコプターを眺めていた。

それが、「原発事故」を身近に感じた最初の出来事だった。霞ヶ城公園の近くにある、福島県男女共生センターが「スクリーニング」の検査場所となり、ここにヘリコプターで双葉厚生病院の患者を移送していた。作業にあたる自衛隊の隊員は、皆完璧な防護服に身を包み、「これはただ事ではない」と、誰もが瞬時に事故の重さを理解することになった。

浪江町に接する二本松市は、避難する町民を受け入れ、主に体育館などの公共施設が避難場所となり、この避難は、以後故郷に戻ることのない長期避難の始まりであった。

当時は、民主党政権で総理大臣は菅直人官房長官枝野幸男

それから毎日、決まりごとのように「直ちに影響はありません」という、枝野幸男の言葉を聞くようになるが、原発から50キロちょっとの私の居住地でも、自主避難を開始する人がけっこういた。12年経っても、その「自主避難」から戻ってこずに、「自主避難」の権利を主張し、避難先の家賃の支払いを拒否し、裁判に至る人もいる。放射能に対する恐怖感は、ひとそれぞれなので、一概に「もう安全でしょう」とも言えない気もするが、おおよそのことは科学的に理解できるわけで、「12年経っても自主避難」という家族には、放射能とは別の問題があるのではないかと、察するわけである。

私は、昨年のロシアによるウクライナ侵攻によって始まった、世界的なエネルギー危機の状況をニュースで見ながら、「原発推進派」に変身した。

福島県二本松市に住んで、原発事故の影響の深刻さをリアルに体験しながらも、それでも「原子力発電」をすすめるべきであると、本気で思うわけだ。

現在の日本における電力供給は、7割以上を石炭・石油とLNGで賄っている(2020年)。原子力は4%(2020年)。再生可能エネルギーが12%。水力が8%。大雑把だが。

様々な電源の中から、一つを選んでそれで100%賄うのは現実的ではなく、原発推進と言っても、4%を8%に上げるくらいの話ではある。この4%は、太陽光発電を現在の9.3%から4%アップさせるよりも、環境に害がないと、私としては思う。

メガソーラーにも、いろいろと問題はあり、私の地元で、里山の果樹園だったところが突然ソーラーパネルで覆われていたりする風景を見ると、なんとも複雑な気持ちになる。

果たして本当に、太陽光発電は、「ソフトエネルギー」なのか、と。場所の選定は、かなり慎重にしないと、結果的に様々な問題が起きてくることは想像に難くない。

まあ、だからといって、原子力発電に問題はないのかと問われれば、専門家でもない私に明確な答えは出せないが、少なくとも、石炭を燃やして発電するよりは、未来にとって良さそうに思えるわけだ。

化石燃料を原料とする発電は、言うまでもなく二酸化炭素の抑制という、地球規模的な課題に対抗することであり、気候変動の影響による不幸の連鎖を考えれば、原子力発電のほうが、良いのではないかというのが、私の考えだ。

核のゴミをどうするのか、という最大の課題はあるにしても、「今、ここにある危機」をしのぐためには、原子力発電は「あり」だと思うし、実際にEU諸国は原子力発電を推進する方向に舵を切った。ロシアからのLNGの供給が止まり、電力供給が不安定になって、命にも関わる事態に陥るリスクを想定すれば、「やむを得ず」原子力、という選択は、賢者の選択だと、私は思うのだが。

3月11日の深夜にクルマで南相馬に向かい、海岸にある防波堤の階段の上にマットとシュラフを広げ、暗闇の中で、ちょっと不気味な力強い波の音を聞きながら眠りについた。海辺でシュラフを広げて、夜空を見上げながら寝るのは、学生時代以来だった。昼間は温かい日だったが、さすがに夜は寒く、「3月11日の南相馬で、寝るにも寒い夜」を体感するだけでも、私にとっては意味があった。豪華な装備でウキウキのオートキャンプとは、全く別の体験で、ただの「野宿」、だ。

夜が明けてから、小高、浪江、津島と回って自宅のある二本松に戻った。

飯館の方は、人も住み始めて復興が進んでいる感じがするが、さすがに「帰還困難区域」の中のドライブは、どうにも気が重い。この12年間に、建物の撤去が次々と進み、土壌や森林の除染もすすんでいるようだが、津島を通る114号線を、自転車でも通れる日が来るのは、まだまだ先のようだ。

原子力災害、の被爆地を、目の当たりにすると、「原子力発電推進」と言い出した自分の考え方にも、若干の疑問は浮かんでくるが、「地域と地球」「ローカル、グローバル」という2つの視点を比べてみた時に、石炭・LNGという化石燃料に依存することは、やめるべきだと思うし、「やむを得ず原発」、が正しい道じゃないかと思う、3月12日だった。